事業承継の性質
入院中だけでなく、退院後の診療所における治療内容を定型化するうえでもパスを利用することができます。
第3のアウトカムの評価は、確かに患者の立場からすれば最も望ましいでしょう。
しかし、そもそも治ったか治らないかは、医師や医療機関の質ももちろん関係しますが、それよりも大きく影響するのは、患者がもともと治りやすい状態にあったかどうかです。
たとえば早期のがんであれば、進行しているがんより治りやすいのは当然です。
このような患者の状態を統計的に考慮したうえで成績を比べなければいけませんが、そのためには各患者の医療情報をデータベース化し、整備することが必要で、その際にも評価できるのは比較的頻度の高い病気に限られます。
医療の評価は今後の医療改革を進めるうえで各国に共通する非常に重要な課題で、評価体制の整備とデータベースの構築が不可欠です。
ただし、評価の目的はアメリカとそれ以外の国で異なっており、アメリカでは質とコストを比較して、需要側による賢い購入を促進することを政府が進めているのに対して、それ以外の国では、供給側全体の水準を底上げすることが目的です。
しかし、アメリカにおいても、医師・医療機関は同僚から受ける評価の方が、需要側の保険者による報償や罰則よりも影響が大きいことが検証されており、医療の質を確保するうえで、金銭以外の要素の方が重要であることが検証されています。
限られた財源の中から配分する場合、新しい技術を保険で給付するかどうかの決定は非常に重要です。
そこで、治療の効果だけではなく、コストも比べて分析する方法として「費用効用分析」があります。
具体的には、ある医療サービスを提供することによって、平均的にどれだけ生活の質(QOL)を考慮した寿命を延長させることができるかを、かかった費用との関係で分析します。
その際、生活の質にはいろいろな側面がありますが、それを1つの指標に換算し、延長した寿命を乗じたQALY(質修正生存年=質を調整した寿命)として効果を評価します。
たとえば寝たきり状態の生活の質が、元気な状態の10分の1の評価なら、寝たきりの状態で10年生きることは、元気な状態で1年生きることと同じになります。
このように1つの指標に換算することによって、様々な医療分野における治療の成果を比較できます。
通常提供されている医療サービスの中には、1QALYの成果を上げるために、非常に大きなコストの差があることが明らかです。
また、同じ医療サービスでも、対象とする年齢によってコストは大きく異なります。
たとえば血中コレステロールの検査と食餌療法を40〜70歳未満の年齢層に対して実施して心臓病などを予防した場合には、1QALYの成果を得るために6万円要するのに対して、より若い25〜39歳の年齢層では心臓病になる確率が低いので心臓病予防対策の費用対効果は低くなり、384万円もかかります。
こうした費用効用分析の結果を、実際の診療場面における「適切性」を判断する根拠とすると、個々の患者の特性に対応できなくなり、また現在治療を受けている患者の治療を中止することは難しいですから用いられません。
しかし、新しく生活の質(QOL)の評価はなかなか困難な課題です。
人によって生活のどの分野に比重を置いて質を測るかはそれぞれ異なります。
しかし、治療の効果は、最終的には患者自身によるQOLの自己評価によって判断すべきであり、また医療費との関係を分析する際はQOLの様々な側面を集約して総合的に評価する必要があります。
その1つの方法が、イギリスのヨーク大学を中心にして開発されたEuroQol(ユーロコール)のEQ-5Dです。
これは移動の程度(歩き回れるかどうか)、身の回りの管理(洗面や着替え)、普段の活動(仕事、勉強、家事、余暇など)、痛み/不快、不安/ふさぎ込み、の5つの項目をそれぞれ3段階で評価する自己申告式の質問表調査であり、これら5つの結果の組み合わせを換算表で見ると、生活全体を反映した1つの値で表すことができます。
EuroQolを用いることによって、分野の異なる様々な医療技術の評価が可能となり、特に医薬品の効果を評価するうえで大きな成果が期待されます。
英語の原版から、各国で厳密な手続きのもとに翻訳検証がなされており、著者らも加わって日本語版と日本における実測に基づいた換算表も完成したので、今後の活用が期待されます。
なお、イギリスでは製薬会社が臨床治験で経済評価も行い、そのデータをNICE(NationallnstituteofClinicalExcellence)に提出することが定着してきており、その際QALYによって効果を測定する場合はEuroQolが用いられています。
有効性などの要素も考慮されますが、1QALY当たりの費用がおおよそ3万ポンド(600万円)以上であれば「推奨せず」の決定がなされ、実質的に使用できないことになります。
EQ-5Dの日本語訳は「臨床のためのQOL評価ハンドブック」(医学書院、2001年)を参照してください。
い薬や健診事業を保険で給付するかどうかを決める際、あるいは施設を整備する際には、イギリスやカナダなど多くの国においては分析の結果を参考にしています。
ちなみに、イギリスでは1QALYの成果を得るために要するコストが600万円を超えると、給付の対象とすることが難しくなります。
こうした経済分析を補完するため、公聴会や住民に対するアンケート、直接投票などを実施し、それによって医療における優先分野を決めることが試みられています。
効果とコストだけの分析結果で資源配分を決めるのは適当でなく、倫理観や社会としての価値観も十分反映させる必要があるからです。
たとえば、経済分析では一般に予防活動が高く評価されますが、住民の意見では救命に用いるハイテク医療の方が、たとえ治る確率が低くても優先される傾向があります。
いずれにせよ、こうした住民からの意見収集、およびマスコミによる報道などは、医療関係者に対して今までの医療サービス提供のあり方を見直す契機を与えます。
また、患者として「最高の給付」を望むことと、住民として「最低の負担」を望むことは、相矛盾する要求であることを社会として自覚するうえで役立つでしょう。
これまで述べてきたのは医療費のフローについてであり、施設・設備やマンパワーなどのストック面ではありません。
しかし、将来における医療費の伸びを決めるうえで、ストック面に対する対応の方が重要です。
施設・設備については、多くの国では地域医療計画によって対応されています。
それについて述べる前に、計画の前提となっている医療需要の特性を説明します。
患者が初めて受診するのは、圧倒的に多くの場合、風邪などの軽症の病気によりますので、それに対応し、必要に応じて専門医に紹介するのが「プライマリーケア」(1次医療)です。
一見、風邪のようであっても重大な病気の予兆かもしれませんし、また患者は訴えないがうつ病など病気が背後にあるかもしれません。
そこで、患者の精神的・社会的側面も考慮して、総合的に判断して対応し、専門医に紹介する必要があります。
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